大麻の栽培で逮捕
- 2021年11月26日
- 薬物事件
大麻の栽培について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事件~
大阪府堺市の自宅で飲食店を営んでいるAは、自宅に庭に設置している物置小屋で大麻を栽培していました。
Aは、10年以上前に友人から大麻の栽培方法を教えてもらって、それから大麻を栽培していましたが、最近では、栽培する量を増やして友人等に密売していました。
先日、Aから大麻を購入した友人が大阪府堺警察署に逮捕されたという話を聞いたAは、警察の捜査が自身にまで及ぶのではないか心配になり、刑事事件に強い弁護士の無料法律相談に行くことにしました。
(この事例はフィクションです)
~大麻取締法~
大麻取締法では、大麻の所持、譲渡、譲受、輸出入、栽培等が禁止されており、Aの行為は、栽培と譲渡に該当するでしょう。
~大麻取締法第3条第1項~
「大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。」
ここでいう大麻取扱者とは、大麻栽培者及び大麻研究者のことです。
大麻栽培者とは、都道府県知事の免許を受けて、繊維若しくは種子を採取する目的で大麻草を栽培する者のことです。
また大麻研究者とは、都道府県知事の免許を受けて、大麻を研究する目的で大麻草を栽培し、大麻を使用する者のことです。(大麻取締法第2条)
~栽培の禁止~
大麻取締法第24条に大麻の栽培を禁止する旨と、その罰則が明記されています。
~大麻取締法第24条第1項~
「大麻を、みだりに栽培し…た者は、7年以下の懲役に処する。」旨が明記されています。
ここでいう「みだりに」とは、社会通念上正当な理由が認められないという意味です。
上記のとおり、法律上、大麻の栽培が認められているのは大麻取扱者だけですので、それ以外の者が大麻を栽培すれば、この「みだりに」と言えるでしょう。
~大麻取締法第24条第2項~
「営利の目的で、大麻を栽培した者は、10年以下の懲役に処し、又は情状により10年以下の懲役及び300万円以下の罰金に処する」旨が明記されています。
営利の目的とは、犯人が自ら財産上の利益を得たり、第三者に得させることを、動機・目的とすることを意味します。
簡単に言うと、営利目的に大麻を栽培することとは、販売して利益を得ることを目的に大麻を栽培することです。
大麻を営利目的で栽培していたことは、栽培した大麻を実際に販売していたかどうか、またそれによって利益を得ていたかどうかによって立証されます。
~譲渡の禁止~
大麻取締法第24条の2に、大麻の譲渡を禁止する旨と、その罰則が明記されています。
~大麻取締法第24条の2第1項~
ここに「大麻を、みだしに…譲り渡した者は、5年以下の懲役に処する。」旨が明記されています。
~大麻取締法第24条の2第2項~
ここには「営利の目的で、大麻を譲り渡した者は、7年以下の懲役に処し、又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金に処する」旨が明記されています。
単に、一度だけ友人に大麻を有償で譲り渡しただけで、営利目的の大麻譲渡とは認められないでしょう。
営利目的の大麻譲渡は、複数回に渡って、大麻を有償で譲渡するといった反復継続性が必要となり、それによって利益を得ていなければなりません。
~量刑~
営利目的でなければ、大麻の栽培も、譲渡も、初犯であれば執行猶予付の判決が十分に望めます。
逆に、営利目的が認められてしまうと、初犯であっても実刑判決の可能性が十分に考えられます。
営利目的の大麻栽培や、譲渡事件は、これまでの密売実績や、密売の規模、栽培の規模等によって、その量刑は左右されます。
Aの場合、営利目的の大麻栽培と、譲渡事件で起訴されて有罪が確定すれば、この二罪は併合罪となるので、有罪が確定した場合「15年以下の懲役、又は情状により15年以下の懲役及び500万円以下の罰金」が言い渡されます。
最高で15年の懲役と500万円の罰金と考えれば、決して軽い罪ではないので注意しなければなりません。