ごみを持ち去って警察から呼び出し
- 2021年2月26日
- コラム
ごみを持ち去って警察から呼び出し
ごみを持ち去って警察から呼び出しを受けた場合について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部が解説します。
~事例~
会社員のAは、大阪府堺市にあるアパートで一人暮らしをしていました。
ある日、Aはアパートのごみ捨て場に自転車が捨てられているのを発見しました。
まだ使えそうな自転車だったので、Aは拾って帰り、しばらくの間使用していました。
あるとき、Aがその自転車で出かけていた際、巡回中の大阪府堺警察署の警察官に声をかけられました。
Aの乗っていた自転車は、どうやら盗難届が出ていたそうです。
後日、大阪府堺警察署で話を聞かれることとなったAでしたが、その前に弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
今回のAは、ごみ捨て場にあった自転車を自分の物にして、警察から呼び出しを受けています。
このような場合、窃盗罪や占有離脱物横領罪となってしまう可能性があります。
~窃盗罪~
罰則:10年以下の懲役又は30万円以下の罰金
今回の事例のAはごみ捨て場にあった自転車だからと自転車を持ち去っていますが、もしもたまたま自転車の持ち主がごみ捨て場近くに用事があり自転車を停めていただけであれば、自転車の「占有」は持ち主のもののままと考えることもできます。
そうなれば、その場から自転車を持ち去ってしまったAには窃盗罪が成立することになるでしょう。
さらに、本当に捨ててあった自転車であったとしても、ごみ捨て場がその自治体等の管理する場所であり、そこに捨てられていたものが自治体等の支配・管理下にあると判断された場合には、これも窃盗罪となる可能性があります。
ごみということは財産的価値がなく、窃盗罪のいう「財物」といえないのではないかとも考えられますが、窃盗罪の「財物」の財産的価値については判断が分かれています。
過去の事例ではメモ1枚やちり紙13枚といったものについて、財産的価値がわずかであるとして窃盗罪の「財物」とはいえないとした事例も見られますが、例えばAの持ち帰ったような自転車などは、財産的価値があると判断される可能性は高いでしょう。
~占有離脱物横領罪~
罰則:1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料
今回の事例の自転車の占有が誰にも属していなかった場合には、占有離脱物横領罪が成立する可能性があります。
まず、占有離脱物横領罪が対象としている物は、「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物」です。
「遺失物」とは、その物を占有(支配・管理)していた人の意思によらずにその物が占有していた人の支配・管理から離れてしまい、さらにまだ誰の支配・管理下にもない状態の物を指します。
今回のAが持ち帰った自転車は、盗難届のあった自転車でした。
盗難届を出しているということは、自転車の持ち主はまだ自転車は自分の物であると考えていると思われますから、自転車は持ち主の意思に反してその支配・管理下から離れてしまった「占有を離れた他人の物」といえるでしょう。
Aはその自転車を自分の物としてしまったわけですから、占有離脱物横領罪の「横領」にあたる行為をしてしまったと考えられます。
なお、今回のように盗難届の出ていた自転車ではなく、ごみ捨て場に捨ててあった単なるごみであっても、持ち帰れば占有離脱物横領罪が成立する可能性があります。