万引き事件の刑事手続
- 2019年10月13日
- コラム
万引き事件の刑事手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部が解説します。
◇ケース◇
建設現場で作業員として働いているAさんは、これまで何度か和泉市のコンビニで缶酎ハイ等の酒類を万引きしていますが、捕まったことはありませんでした。
しかし遂に、3日ほど前にいつも万引きしているコンビニで、缶酎ハイとつまみ(販売価格約800円)を万引きしたところを店員に見つかってしまい、110番通報されてしまいました。
少額であったことからAさんは逮捕されませんでしたが、大阪府和泉警察署に連行されて取調べを受けた後に帰宅が許されました。
初めて警察に検挙されたAさんは、今後の刑事手続きがどのように進むのか不安で、刑事事件に強い弁護士に相談しました。
(フィクションです。)
◇万引き◇
コンビニなどのお店に陳列されている商品を、店員の目を盗んで盗れば万引き、つまり窃盗罪となります。
警察が取り扱う刑事事件の中でも最も多いと言われている窃盗罪です。
人の家やお店に忍び込んで物を盗む、いわゆる侵入窃盗から、自転車盗、万引きに至るまで、窃盗罪の幅は非常に広く、法律上は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と法定刑が定められていますが、その犯行形態によって科せられる処分は大きく異なります。
本日はその中でも「万引き」について解説します。
◇万引き事件の刑事手続き◇
万引き事件は、逮捕された場合と、Aさんのように逮捕されずに不拘束で捜査された場合とで、刑事手続きの流れが異なります。
~逮捕された場合~
万引き事件を起こして警察に逮捕されると
逮捕→留置→身柄送致→勾留請求→勾留決定→不起訴・略式罰金・起訴
といった刑事手続きが進み、最終的に起訴された場合は、刑事裁判で刑事処分が決定します。
また逮捕されたとして、上記の手続き中ずっと身体拘束が続くわけではありません。
勾留が決定されるまでは、身体拘束の必要がないと判断された時点で釈放されますし、勾留が決定した後でも、弁護士による活動によって釈放が早まる可能性があります。
ただ釈放されたとしても、その時点で刑事手続きが終了するわけではありませんので注意しなければなりません。
~逮捕されなかった場合~
Aさんのように、警察に逮捕されなかった場合は
検挙→警察署に呼び出されての取調べ等の捜査→書類送致→検察庁に呼び出されての取調べ→不起訴・略式罰金・起訴
といった刑事手続きが進みます。
逮捕された場合は、逮捕から身柄送致までは48時間という時間制限がありますが、逮捕されなければ、検挙されて書類送致までの時間制限はありません。
万引き事件の場合ですと、比較的、警察が捜査しなければならない内容が少ないため、警察署に呼び出されて取調べ等の捜査を受ける回数は、2~3回ではないでしょうか。
ただ書類送致されるまでの期間は、警察署の規模や、捜査を担当する警察官の業務量によって異なり、早い場合で1カ月以内、遅い場合ですと、警察の捜査を終えて、3カ月以上経って書類送致されることもあります。
◇万引き事件の刑事処分◇
上記したように、万引きは窃盗罪ですので、その法定刑「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」の範囲内で刑事処分が科せられます。
初犯の場合で、被害額が少額であれば、被害弁償(商品の買取りや、盗んだ商品の返還)していれば不起訴処分になる可能性があります。
ただ、Aさんのように余罪が多数ある場合は、初犯で、被害額が少額であっても略式罰金となる可能性が出てきます。
再犯の場合は、示談等の特別な事情がない限り、前回の刑事処分よりか重い刑事処分が科せられることとなるでしょう。
また一定の条件を満たしている場合は、微罪処分といって、検察庁に送致されない特別な刑事手続きで事件が終結することもあります。