カード詐欺事件で少年が逮捕
- 2019年11月5日
- コラム
17歳の少年がカード詐欺未遂で逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部が解説します。
◇事件◇
11月3日の朝刊によりますと、先日、富田林市において、17歳の少年がカード詐欺未遂の容疑で大阪府警に逮捕されたようです。
警察の発表によりますと、少年が逮捕された地域では百貨店の従業員や、全国銀行協会の職員を装った不審な電話が相次いでおり、今回の事件の被害者のもとにも「あなたのカードが店で不正に使われそうになった。新しく作り直す必要がある。」といった内容の、嘘の電話がかかってきていたようです。
こういった状況から、この地区での警戒を強化していた大阪府警が駅のベンチに座っていた少年を職務質問し、事件に関与していることが発覚したことから逮捕したようです。
(令和元年11月3日の読売新聞朝刊を参考)
◇最近の特殊詐欺事件では窃盗罪が適用されている◇
毎日のように、新聞やテレビのニュース等で特殊詐欺事件の報道がされており、警察は注意を呼び掛けると共に、その捜査を強化しているようですが、全国的に特殊詐欺事件が多発している状況に変わりはないようです。
特殊詐欺グループは、警察等の捜査機関の摘発を逃れるために次から次に新しい手段で犯行に及んでおり、最近では「受け子」に対して窃盗罪が適用される事件も頻発しています。
これまでは、被害者から「受け子」が現金や、キャッシュカードを騙し取っていましたが、窃盗罪が適用されている事件では、事前に被害者にキャッシュカードを封筒に入れさせて、被害者が目を離した隙に、「受け子」が、その封筒を別の封筒と入れ替えて盗むといった方法のようです。
確かにこのような方法ですと詐欺罪の構成要件である「財物の交付」が存在しないので、詐欺罪の適用は難しいでしょう。
ちなみに、詐欺罪と窃盗罪の法定刑については、懲役刑の規定はともに「10年以下」と同じですが、詐欺罪では規定のない「罰金刑」が窃盗罪には定められており、その上限は50万円です。
ですから、もし窃盗罪の適用を受けた場合、有罪が確定的であっても略式起訴による罰金刑の刑事罰が科せられる可能性があり、その場合は、一般公開されている刑事裁判を受ける必要はありません。
※少年事件の場合は、家庭裁判所から検察庁に逆送されない限り、法律で定められた刑事罰(法定刑)を科せられることはありません。
◇「受け子」で少年が逮捕されると◇
特殊詐欺事件の「受け子」容疑で警察に逮捕されてしまうと、非常に高い確率で10日~20日間の勾留を受けることになるでしょう。
それは、警察等の捜査当局は、「受け子」の逮捕をきっかけにして、振り込め詐欺グループ全体の摘発を目的に捜査しています。
そのため、警察は逮捕された「受け子」の交友関係等を徹底的に捜査すると共に、逮捕された「受け子」に対しては厳しい取調べを行います。
そして勾留期間が終了すると同時に、事件は、検察庁から家庭裁判所に送致されるのですが、家庭裁判所の裁判官が「観護措置」を決定した場合、少年はそれまで勾留されていた警察署の留置場から堺市にある少年鑑別所に移動します。
事件に内容よっては観護措置の決定がなされずに、釈放される少年もいますが、「受け子」で逮捕、勾留された場合は、非常に高い確率で観護措置が決定するでしょう。
こうして少年鑑別所で、約4週間の観護措置期間を過ごすことになるのですが、観護措置は、取調べ等の犯罪捜査を目的にしている勾留とは異なり、少年の素行や、性格、家庭環境等の調査を目的としているので、基本的に警察等の捜査機関による取調べは行われません。
また刑事弁護人として選任されていた弁護士も、弁護人から付添人という立場に変わります。
そして観護措置の期間が終了すると同時に、家庭裁判所において少年審判が開かれて、そこで少年の処分が決定します。
振り込め詐欺や、カード詐欺など、いわゆる特殊詐欺事件については警察等の捜査当局は取り締まりを強化しており、裁判所についても非常に厳しい決定をする傾向にあります。
これまで警察沙汰を起こした歴のない少年であっても、逮捕後の対処を誤れば、少年院送致といった厳しい処分となる可能性も十分に考えられるので注意しなければなりません。