物を落としたら...①
- 2021年3月19日
- コラム
物を落としたら...①
物を落とした場合について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部が解説します。
~事例~
大阪府堺市のマンションに住む主婦のA子は、ベランダでガーデニングをしていました。
すると、下に隣人のVが歩いているのを見つけました。
A子はたびたび隣人であるVの騒音に悩まされており、Vに恨みを持っていたことから手に持っていた植木鉢をVに向かって投げ落としました。
植木鉢はVには当たりませんでしたが、Vの近くに落ち、A子がこちらに向かって投げ落とすのを見ていたV
は大阪府堺警察署に通報しました。
駆け付けた警察官により、A子は殺人未遂の疑いで逮捕されてしまいました。
(この事例はフィクションです。)
~物を人に向かって落とすと~
物を人に向かって高所から落とした場合に成立する可能性のある犯罪について検討してみましょう。
まずは、今回A子が未遂犯として逮捕されている殺人罪です。
~殺人罪~
殺人罪は、刑法第199条に規定されています。
第199条
「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」
第203条
「第199条及び前条の罪の未遂は、罰する。」
殺人の成立には、人を殺そうという故意(殺意)が必要です。
今回のA子がVを殺してやろうと考えていたかが問題となります。
ただ、刑法では未必の故意と呼ばれる概念があります。
未必の故意とは「行為者が自らの行為から罪となる結果が発生することを望んいるわけではないが、もしそのような結果が発生した場合それならそれで構わないとする心理状態」を意味します。
つまり、A子に積極的に殺してやろうという意思がなかったとしても「死ぬかもしれないがかまわない」と思って植木鉢を落としていれば殺人罪が成立する可能性があるのです。
また階層にもよりますが、植木鉢をマンションのベランダから人に向かって落とし、直撃すれば死ぬかもしれないことは容易に予想されますので、未必の故意があったと判断される可能性は高いです。
刑事事件では、内心である故意が認められるかどうかによって罪名が変わったり、無罪となったりする可能性があります。
しかし、故意は自身の供述だけでなく、客観的な証拠からも判断されることになりますので、故意がなかったと主張していく場合には刑事事件に強い弁護士に弁護活動を依頼するようにしましょう。
できるだけ早い段階で刑事事件に強い弁護士を選任することで、不利な供述が証拠となってしまうことを防いだり、有利な証拠を固めることができる可能性は高まります。
~暴行罪~
上記事例では、植木鉢という非常に危険な物を落としていますが、落とした物が人が死ぬような物ではなかった場合も検討してみましょう。
例えば、嫌がらせ目的で生卵を投げつけた場合などはどうなるでしょう。
この場合は、暴行罪となる可能性が高いでしょう。
第208条
「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」
被害者が怪我をしたりすれば傷害罪(15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)となる可能性があります。
~軽犯罪法違反~
たとえ人がいない状態であったとしても、他人の身体又は物件に害を及ぼすおそれのある場所に物を投げただけで軽犯罪法違反(拘留又は科料)となる可能性もあります。
軽犯罪法
第1条「左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。」
11号「相当の注意をしないで、他人の身体又は物件に害を及ぼす虞のある場所に物を投げ、注ぎ、又は発射した者」
このように、高所から物を落とす行為は法令で罰せられる可能性の高い行為ですので、絶対にしないようにしましょう。
また、もしもしてしまった場合にはすぐに弁護士に相談するようにしましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部では、刑事事件に強い弁護士が無料法律相談、初回接見を行っています。
無料法律相談、初回接見のご予約はフリーダイヤル0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、お気軽にお電話ください。
次回は物を落とした別の場合を検討します。