【弁護士インタビュー①】放火殺人で90歳の男性が逮捕
- 2021年11月30日
- コラム
集合住宅に放火して85歳の女性を殺害したとして、死亡した女性の夫が警察に逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部の弁護士にインタビューしました。
Q 先生、11月24日に、90歳の男性が住んでいる集合住宅に放火して、自分の妻を殺害した容疑で警察に逮捕された事件をご存知ですか?
A はい。新聞で読みました。
どういった理由で犯行に及んだのかまで把握していませんが、高齢の方がお亡くなりになる大変痛ましい事件で衝撃を受けました。
Q ニュースによると逮捕容疑は、現住建造物等放火と殺人ということですが、この二つの犯罪について教えてください。
A まず現住建造物等放火について解説します。
放火については刑法でいくつかの犯罪が定められていますが、その中でも最も重たいのがこの現住建造物等放火罪です。
現住建造物等放火というのは、現に人が住んでいたり、実際に人がいる建物に放火することで、法定刑は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」と非常に厳しいものです。
続いて殺人罪について解説します。
殺人罪は、人を故意的に殺める犯罪で、皆さんご存知のとおり刑事事件として扱われる犯罪の中で最も重たい罪の一つです。
そして殺人罪の法定刑も、現住建造物等放火罪と同じく「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」です。
Q 二つとも非常に重たい罪になるのですね。こういった重たい罪で逮捕されると、その後の手続きはどうなるのですか?
A 逮捕後の手続きは刑事訴訟法という法律で厳格に定められており、逮捕罪名によって手続きが変わるわけではありません。
一般的には、逮捕から48時間以内に検察庁に送致され、そして送致を受けた検察官は24時間以内に裁判官に勾留を請求し、裁判官が勾留を決定すれば10日間から20日間は警察署の留置場に収容されて取調べを受けることになります。
基本的に勾留の満期と同時に検察官が起訴するかどうかを決めて、起訴された場合は、刑事裁判で刑事罰が言い渡されることになるのですが、殺人罪の刑事裁判ではよく、犯行時の精神状態が争点になるので、起訴前に鑑定留置という手続きが取られて、精神鑑定の期間が設けられる場合もあります。
Q 今回逮捕された男性は90歳と高齢ですが、留置場での生活で特別扱いしてもらえるのですか?
A 基本的には他の留置人と同じ扱いを受けるでしょうが、日常生活が困難な場合は看守さんに補助してもらえるでしょうし、体調面で不安のある場合は、医師の診察を受けることもできます。
留置場内で事故が起きると警察の責任となるので、そういった面で、警察の留置場では細心の注意がされているはずです。
Q 起訴されてからの刑事裁判について教えてください。
A はい。
通常の刑事裁判ですと、起訴された犯人は被告人と呼ばれ、被告人の味方になるのが弁護士です。
そして、被告人や弁護士と検察官が、裁判官の前で争いを繰り広げ、それを聞いた裁判官が被告人の有罪、無罪を判断すると共に、有罪の場合は被告人に対する処分を言い渡します。
しかし現住建造物等放火罪や殺人罪で起訴された場合は、裁判員が参加する特殊な刑事裁判で裁かれることになります。
このような裁判は、裁判員裁判と呼ばれており、裁判員裁判は、無作為に選出された一般人が裁判に参加して、裁判官と共に被告人を裁くことになります。
裁判員裁判は、通常の刑事裁判よりも、起訴されてから裁判が開かれるまで長い期間を要しますが、裁判自体は短期間で終わります。
Q こういった重大事件で警察に逮捕された場合に注意すべきことはありますか?
A 取調べの状況が録音録画される等して、昨今の刑事手続きは適正に行われていると言われていますが、実際に冤罪事件で苦しむ方がいなくなったとは思えません。
後から捜査手続きの不手際が発覚しても、裁判でそれを証明するのは非常に困難ですので、警察の捜査を受けている方は、一刻も早く弁護士に相談することをお勧めします。