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(事例紹介)飲み物に尿を入れて器物損壊罪 | コラム | 刑事事件の弁護士ならあいち刑事事件総合法律事務所 堺版

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(事例紹介)飲み物に尿を入れて器物損壊罪

(事例紹介)飲み物に尿を入れて器物損壊罪

~事例~

同僚女性の水筒に尿を混入させて飲ませたとして、大阪府警西堺署は16日、暴行と器物損壊の疑いで、(中略)会社員(中略)を逮捕した。
(中略)
逮捕容疑は1月28日、堺市西区の会社内で、30代女性のルイボス茶が入った水筒に尿を入れ、飲ませたとしている。
(後略)
(※2022年3月16日産経新聞配信記事より引用)

・飲み物に尿を入れることと器物損壊罪

前回の記事では、容疑者の逮捕容疑の1つである暴行罪を取り上げました。
今回の記事では、逮捕容疑の残りの1つである器物損壊罪を取り上げていきます。

器物損壊罪というと、名前の通り物を壊した際に成立することの多い犯罪です。
しかし、今回取り上げた事例の報道内容を見ると、容疑者はあくまで女性の水筒の飲み物に尿を入れただけであり、何か物を物理的に破壊したということはないようです。
こうしたケースでも器物損壊罪は成立し得るのでしょうか。

まずは、器物損壊罪の条文を確認してみましょう。

刑法第261条(器物損壊罪)
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

器物損壊罪は「他人の物を損壊」することで成立しますが、これには当然物理的に物を破壊することが含まれます。
例えば、他人の壺を割る、他人の車のタイヤをパンクさせるといったことはこの「他人の物を損壊」するということに含まれます。
しかし、器物損壊罪の「損壊」には、こうした物理的な破壊以外にも、その物の効用を侵害することも含まれると考えられています。
つまり、その物自体が壊れていなくとも、その物の価値が下がったりその物が心理的に使えなくなったりすれば、器物損壊罪となり得るのです。
過去の判例にも、食器に放尿する行為が器物損壊罪に該当すると判断されたものがあります(大判明治42.4.16)。
この判例では、放尿された食器をその後食器として使用することは心理的に難しく、食器を食器として使用できなくした=器物損壊罪の「損壊」行為に当たると判断されました。

今回の事例も、容疑者は水筒という飲食に使用する物に対して尿を入れています。
水筒自体はこの行為によって壊れることはないでしょうが、一度他人の尿を入れられた水筒を今後飲食に使用したくないと考えることは自然といえるでしょう。
ですから、容疑者は尿を入れることでこの水筒を水筒として使用できなくした=器物損壊罪の「損壊」行為をしたと考えられ、器物損壊罪の容疑をかけられるに至ったと考えられます。

前回の記事で取り上げた暴行罪同様、器物損壊罪もイメージとは食い違う状況で成立するケースが存在します。
刑事事件では、こうした一般のイメージとは離れたケースで犯罪が成立するパターンもしばしば存在します。
自身にかけられた容疑について適切に把握できないまま刑事手続に対応することは、後の取調べや裁判への対応に悪影響が出る可能性もありますから、刑事事件化してから早い段階で弁護士に相談しておくことをおすすめします。

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