痴漢だと思って暴行したら勘違いだった!正当防衛は成立する?
- 2023年12月4日
- コラム
深夜に堺市内の路上を歩いていた女性Aさん(20代)は、突然後ろから声をかけてきた男性を痴漢だと思い、自分を守るために持っていた傘で殴打しました。
ただ男性は痴漢ではなく、Aさんが落とした財布を渡そうとしていただけでした。
(※この事例はフィクションです。)
上記の事例を参考に、痴漢(不同意わいせつ)だと思って暴行に及んだ場合、正当防衛が成立するかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
暴行罪
暴行罪は、刑法第208条に規定されています。
刑法第208条
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
今回の事例だと、Aさんは、声をかけてきた男性に対して傘で殴打しているので、暴行罪が成立するでしょう。
正当防衛が成立?
前述したように、Aさんの男性に対する暴行罪は客観的に成立しますが、Aさんは男性が痴漢だと思って、自分を守るための手段として傘で殴打しています。
このように、自分の身に危険を感じた際の防衛手段として行った行為のことを「正当防衛」と言い、正当防衛による行為は処罰されません。
正当防衛については、刑法第36条に規定されています。
刑法第36条
急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
「急迫不正の侵害」とは、違法な侵害行為が差し迫っていて危険が及ぶ可能性が高い状況を指します。
今回の事例で考えると、Aさんの男性に対する行為(傘で殴打)は、前条に規定されている「自己または他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為」に該当するでしょう。
ただ、男性はAさんに対して違法な侵害行為をするつもりはなく、ただ落とし物を渡すつもりだったので、Aさんは「急迫不正の侵害」を受けていなかったことになります。
つまり正当防衛が成立する要件を全て満たしていないので、Aさんの暴行行為に正当防衛は認められないことになります。
誤想防衛
Aさんが男性に対して行った行為のように、正当防衛が成立するための要件である「急迫不正の侵害」がないのに、これがあると誤信した防衛行為を「誤想防衛」と言います。
誤想防衛が問題となった裁判では、以下のような判決内容が記載されています。
「急迫不正の侵害があるものと誤認して防衛行為を行った場合に、右防衛行為が相当であったときは、いわゆる誤想防衛として事実の錯誤により故意が阻却され、犯罪は成立しないものと解するのが相当である。」(東京高裁昭和59年11月22日)
「事実の錯誤」とは、行為者が認識している事実(認識事実)と発生した事実(発生事実)が一致していない状態を指し、発生事実に対する処罰は与えられないという原則があります。(※一部例外もあります)
まずは弁護士に相談
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