(事例紹介)老人ホーム火災事件で現住建造物等放火罪に
- 2022年9月26日
- その他の刑法犯事件
(事例紹介)老人ホーム火災事件で現住建造物等放火罪に
~事例~
16日午後10時35分ごろ、大阪府藤井寺市沢田の住宅型有料老人ホーム(中略)施設の男性職員から「4階のトイレから出火し、煙が充満している」と119番があった。大阪府警羽曳野署や柏原羽曳野藤井寺消防組合によると、スプリンクラーが作動して20分後に消し止められたが、80~92歳の入所女性4人が体調不調を訴え、病院に搬送された。
自室のトイレに火を付け天井などを焼いたとして、同署は現住建造物等放火容疑で、(中略)容疑者(81)を逮捕した。
(後略)
(※2022年9月17日8:50YAHOO!JAPANニュース配信記事より引用)
~現住建造物等放火罪~
今回取り上げた事例では、老人ホームの火災事件で、被疑者が現住建造物等放火罪の容疑で逮捕されています。
放火事件では、放火された対象がどういったものかによって成立する犯罪が異なります。
例えば、今回取り上げた事例では、現住建造物等放火罪という犯罪が容疑となっていますが、これは放火された対象が「現住建造物等」であると判断されたことによります。
刑法第108条(現住建造物等放火罪)
放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
この条文のうち、「現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物」という部分が、罪名の「現住建造物」という部分に当たるといえます。
「現に人が住居に使用」しているということは、簡単に言えば人が住んでいる建造物であるということを指します。
例えば、マンションは人が住んでいる建物ですから、「現に人が住居に使用し」ている「建造物」と言えるでしょうから、マンションに放火すれば現住建造物等放火罪となり得るでしょう。
これはたとえたまたまマンションが無人であっても、そのマンションに住んでいる人がいるというだけで当てはまります。
そして、「現に人がいる建造物」とは、その放火行為があったときに建造物の中に人がいることを指します。
例えば、デパートなどの商業施設は人が住んでいるわけではありませんから、「現に人が住居に使用し」ている「建造物」ではないかもしれませんが、営業中であれば中に人がいますから、「現に人がいる建造物」となり、現住建造物等放火罪の客体になり得ます。
今回の事例の老人ホームを考えてみましょう。
今回の事例で放火の対象となった老人ホームは住宅型の老人ホームと報道されており、そこで寝泊まりして生活している人たちがいると考えられます。
ですから、この老人ホームに住んでいる人たちがいる=「現に人が住居に使用し」ている「建造物」であるといえ、そこに放火した場合には現住建造物等放火罪が成立し得るということになるのです。
なお、放火された老人ホームが住宅型ではなく、誰もそこで寝起きして生活しているわけではないという場合であっても、誰か建物の中にいるときに放火をしたということであれば、現住建造物等放火罪に問われることとなります(現に住居でない建造物かつ現に人のいない建造物に放火したということになると、非現住建造物等放火罪に問われます。)。
~放火事件と刑事裁判~
現住建造物等放火罪は、死刑や無期懲役が定められている非常に重い犯罪です。
刑罰の下限も懲役5年となっており、有罪となり情状酌量がなければ基本的に執行猶予もつきません(執行猶予がつけられるのは言い渡される刑罰が3年以下の場合に限られます。)。
刑事裁判となった場合には、裁判員裁判の対象ともなるため、裁判への対応も慎重に行わなければなりません。
現住建造物等放火事件などの重大事件の場合には、その裁判の準備も含めて、早い段階から活動を開始することが望ましいといえるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、放火事件を含む重大事件であっても、ご相談・ご依頼を受け付けています。
まずはお早めにお問い合わせください。