公訴時効と盗品等無償譲受罪
- 2020年5月23日
- コラム
盗品等無償譲受罪の公訴時効について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部が解説します。
◇盗品等無償譲受事件◇
Aさんは、友人からバイクを無償でもらいました。
友人からは「もう10年以上前に盗んだバイクだ。」と言われましたが、Aさんは時効が成立しているから大丈夫だろうと考えていました。
このバイクを運転中にAさんは、堺市北区の路上で信号無視をしてしまい、大阪府北堺警察署の警察官に取締りを受けました。
その際に、バイクが盗品であることが発覚し、警察官からバイクについて追及を受けたAさんは、もう時効が成立しているので大丈夫だろうと思って、バイクを友人から無償で譲受けた経過を警察官に説明したのです。
Aさんは、大阪府北堺警察署に連行されて取調べを受けました。
(フィクションです)
◇公訴時効◇
刑法では、犯罪が行われた後、公訴されることなく一定期間が経過した場合には、公訴が提起できなくなります。
これを公訴時効といいます。
公訴時効が成立する時期は、その犯罪の法定刑の大小を基準として規定されており、以下の通りです。
①人を死亡させた罪:法定刑に応じて、公訴時効なし,または30年、20年、10年
②死刑に当たる罪:25年
③無期懲役または禁錮:15年
④長期15年以上:10年
⑤長期15年未満:7年
⑥長期10年未満:5年
⑦長期5年未満または罰金:3年
⑧拘留または科料:1年
窃盗罪の法定刑が「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」ですので、上記⑤に当たり、公訴時効は7年です。
ですから友人が言うように、バイクを盗んだのが10年以上前であれば、バイクを盗んだ窃盗事件については時効が成立していることになり、バイクの窃盗犯人に刑事罰が科せられることはありません。
◇盗品等無償譲受罪◇
盗品等無償譲受けとは、盗品その他財物に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けることで、刑法第256条で「3年以下の懲役」の罰則が規定されています。
盗品その他財物に対する罪とは、窃盗罪や横領罪によって不法領得した財物は当然のこと、詐欺罪や恐喝罪によって不正に取得した財物も対象になります。
また、財産罪によって領得された財物が盗品等となるのですが、ここにいう犯罪行為は、構成要件に該当する違法行為であれば足り、必ずしも有責であることを必要としません。
つまり財産罪を犯した犯人が、刑事未成年者であったり、親族間の犯罪に関する特例の適用によって刑の免除を受たりしている場合や、本犯の公訴時効が完成している場合でも、盗品等無償譲受けの罪は成立してしまうのです。
財産罪の実行行為に加担していた者は、財産罪の共犯となるので、盗品等の罪の主体にはなり得ませんが、財産罪の教唆者や幇助者は、財産罪の実行行為を分担するのではないので、盗品等の罪の主体となり得ます。
盗品等無償譲受け罪は故意犯です。
この罪が成立するには、行為者に盗品であることの認識がなければなりません。
この認識は、いかなる財産罪によって取得した物なのか、犯人や被害者が誰なのか等の詳細まで必要とされませんが、その財物が何らかの財産罪によって領得された物であることの認識は必要です。
つまり今回の事件を検討すれば、Aさんにバイクを譲った友人の窃盗事件について公訴時効が成立していたとしても、Aさんが盗品としてバイクを譲り受けているので、Aさんには盗品等無償譲受罪が適用されてしまいます。
◇刑事事件に強い弁護士◇
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