交通事故で同乗者が死亡
- 2020年8月21日
- コラム
同乗者が死亡した交通事故について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部が解説します。
◇死亡事故◇
泉大津市に住むAさんは、幼馴染の友人と深夜にドライブに行きました。
そしてAさんの車の助手席に友人を乗せて国道26号線を走行中、居眠り運転をしてしまったAさんは、前方を走る大型トラックに追突する事故を起こしてしまったのです。
Aさんは、衝突する直前に、慌ててハンドルをきりましたが、間に合わず助手席側が大破しました。
この事故で、Aさんは軽傷で済んだのですが、助手席に乗っていた友人は死亡してしまい、Aさんは、目撃者の通報により駆けつけた大阪府泉大津警察署の警察官に、過失運転致死罪で現行犯逮捕されました。
警察署での取調べを終えたAさんは、逮捕の翌日に釈放されましたが、今後のことが不安なAさんは、交通事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)
◇過失運転致死罪◇
交通死亡事故を起こした場合、以前は、「刑法」に基づいて処罰されていましたが、現在は平成26年に施行された「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」によって処罰されることになります。
過失(不注意)によって交通死亡事故を起こしてしまった場合、この法律の第5条に規定されている 過失運転致死罪 で処罰されることになります。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律 第5条
過失運転致死傷罪とは
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
自動車の運転によって、人を死傷させるといえば、交通事故の相手方を死傷させると思われがちですが、今回の事件のように、同乗者を死傷させた場合も、過失運転致死傷罪が適用されます。
過失運転致死傷罪の条文を見ると、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者」、つまり、自動車運転上必要な注意を怠ったという 過失 で人を死傷させた場合に、過失運転致死傷罪となることが分かります。
上記したように、過失運転致死傷罪が成立するのは、必ずしも交通事故の相手方が被害者の時だけとは限りません。
今回の事件でAさんは居眠り運転をしているので、過失運転致死傷でいうところの過失があることを否定するのは難しいでしょう。
なお、過失運転致死罪は、人を死亡させるという重大な結果が発生しているため、事故直後に警察に現行犯逮捕されることが多いですが、重大な過失や勾留の必要性が認められなければ、Aさんのように、勾留前に釈放されて、在宅捜査に移行する事件が多いようです。
◇過失運転致死罪の弁護活動◇
過失運転致死罪に該当する交通事件を起こしてしまったケースで、加害者側が自賠責保険だけでなく任意保険にも加入している場合は、一定の条件を満たせば、保険会社から被害者に対して損害賠償金が支払われます。
また被害者側との示談交渉も、加害者側が示談代行サービスのついている任意保険に加入している場合には、保険会社が行ってくれます。
(任意保険に加入していない加害者の場合、被害者側との示談交渉は弁護士に頼むか自分で行うしかありません。)
しかし、保険会社から損害賠償金が支払われたからと言って、加害者が起こしてしまった過失運転致死事件がそこで終わるわけではありません。
過失運転致死事件においては、それぞれの事件ごとに予想される刑事処分や量刑が大きく異なります。
具体的には、被疑事実の認否、注意義務違反(過失)の程度、被害者の人数と負傷の程度、任意の自動車保険の付保の有無や、示談成立の有無、保険金以外での謝罪金や寄付金の有無等によって、予想される刑事処分や量刑が大きく左右されます。
過去の事件を見ると、不起訴になっている事件もあれば、罰金刑や執行猶予付き判決、長期の実刑判決になっている事件もあるので、事前に刑事処分の見通しを、刑事事件専門の弁護士に相談することをお勧めします。