教師の生徒に対する体罰が刑事事件に発展し傷害事件に!!
- 2019年11月20日
- コラム
中学校の部活動において、教師の生徒に対する体罰が傷害事件に発展した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部が解説します。
◇ 体罰が傷害事件に ◇
泉大津市の公立中学校で体育教師をしているAさんは、柔道部の顧問をしています。
先日、練習中にふざけて遊んでいた中学二年生の男子部員を注意する際に、生徒の顔面を平手打ちしました。
その時は、生徒が反省して真面目に練習に取り組み始めたことから、何事もなく終わったのですが、翌日、Aさんは校長先生に呼び出されて、生徒の鼓膜が破れていたことを知りました。
生徒の両親は、すぐにでも警察に被害届を出すと激怒しているようです。
Aさんは、指導とはいえ、生徒に体罰したことは反省しており、教育委員会の処分も仕方ないと覚悟していますが、傷害事件などの刑事事件化することだけは避けたいと考えています。
そこでAさんは、刑事事件に強いと評判の 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部 に相談することにしました。
(フィクションです)
◇ 教師の生徒に対する体罰問題 ◇
昔から、学校内における、教師の生徒に対する体罰には様々な意見があり、かつては「ある程度の体罰は教育の一環だ。」と体罰を容認する意見もありましたが、最近は「いかなる指導の場においても、有形力を行使する暴行行為は、体罰であって指導ではない。」という意見が当たり前で、ちょっとした体罰も教育委員会等の処分の対象となっているようですし、マスコミ等に知られてしまえば大きく報道される可能性があります。
◇ 体罰が刑事事件化されると ◇
教師の生徒に対する体罰が刑事事件化された場合に適用される法律についてですが、被害者となる生徒が傷害を負っていなければ、刑法第208条に定められている 暴行罪 が適用され、生徒が傷害を負っていれば、刑法第204条の 傷害罪 が適用されるでしょう。
~暴行罪~
刑法208条
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する
暴行罪における「暴行」とは「人の身体に対する不法な有形力の行使」とされています。
他人を殴る蹴ったり、他人の衣服を引っ張ったりする行為だけでなく、大太鼓を叩くなど、音を鳴らし続けるといった行為も「暴行」に含まれます。
暴行罪で起訴されて有罪が確定すれば「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」が科せられます。
~傷害罪~
刑法204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する
傷害罪は、暴行罪の結果的加重犯としての性質があります。
傷害罪は、暴行行為の結果として、相手が傷害を負った場合に成立する犯罪だという考えです。
この性質を考慮すれば、傷害罪の「故意」は、暴行の故意で足ります。
Aさんの事件を参考にすると、指導の一環とはいえ、生徒を平手打ちしているので、Aさんに暴行の故意は認められますが、当然、生徒に傷害を負わせるつもりで手を上げていないでしょうから、傷害の故意は認められません。しかし、傷害の故意まで傷害罪の成立には影響を及ぼしませんので、Aさんの体罰が刑事事件化された場合は、傷害罪の適用を受けるでしょう。
傷害罪の法定刑は、暴行罪よりも厳しく「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
傷害罪の量刑は、犯歴や、暴行の程度、傷害の程度によって大きく左右されます。傷害の程度は、医師の作成する診断書を参考とされることがほとんどです。
◇ 刑事事件化させないために ◇
学校教育の場における体罰問題については、世間が非常に敏感になっており、昔であれば誰も気にしなかったような些細な事件でも、最近であれば新聞等で大きく報道されて、世間の関心を集めてしまいます。そのため警察等の捜査当局も、できる限りの捜査を尽くす傾向にあり、認知した全件を刑事事件化し検察庁に送致する傾向があります。
そのような状況ですので、体罰事件の刑事事件化を避けるには、警察が認知する前に親御さんと示談するしかないのが現状ですので、Aさんのような事態に陥ってしまった方は、刑事事件専門弁護士に相談することをお勧めします。