無銭飲食で成立する可能性のある犯罪
- 2020年4月14日
- コラム
無銭飲食について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部が解説します。
◇和泉市の無銭飲食事件◇
大阪府和泉市に住むAは、自宅近くの居酒屋に呑みに出かけました。
しかし、その居酒屋では、注文してもなかなか料理が出てきませんし、店員の態度もひどいものでした。
頭にきたAは、料金を支払わずに出ていくことに決めました。
Aは店員を呼び出し、「料理はまずいくせに全然出てこないし、店員の態度もひどい。こんなものに料金を払うか」と文句を付けました。
店員はAをなだめようとしましたが、Aは「これ以上グダグダ言ってたら暴れるぞ。」と聞く耳を持ちません。
他の客の目もあるということで店員は、Aを帰すことに決めました。
後日、大阪府和泉警察署の警察官がAの自宅を訪れ、Aは恐喝の疑いで逮捕されることになってしまいました。
(この事例はフィクションです)
◇無銭飲食◇
飲食代金を支払わずに店を出ていくという無銭飲食、いわゆる食い逃げが刑事事件化してしまう場合、その状況によって成立する罪名が変わります。
詐欺罪となる場合
これは、みなさん聞いたことがあるかもしれませんが、無銭飲食は詐欺となることが考えられます。
詐欺罪は刑法第246条に規定されており、起訴されて有罪が確定すると「10年以下の懲役」が科されることになります。
246条第2項では財産上に利益についても詐欺罪の対象となると規定されています。
そのため、料金を支払う意思がないのに、あるようによそおって店員をだまし、サービスを受けてそのまま逃走するといった無銭飲食については、財産上の利益を受けたと判断され詐欺罪となります。
他にも、「店員にトイレに行く」と言ったり、「財布を忘れた」などと言ったりして店を出ていった場合なども詐欺罪となるでしょう。
こういった財産上の利益を対象としている罪としては、他にも恐喝罪、強盗罪などがあります。
恐喝罪となる場合
今回の事例のAは、恐喝罪で逮捕されてしまいました。
恐喝罪は刑法第249条に規定されており、罰則は「10年以下の懲役」とされています。
そして、上述のとおり、第249条2項には財産上の利益に対しても恐喝罪が成立すると規定されています。
今回の事例でのAは、その言動が恐喝行為にあたると判断され、恐喝行為によって飲食代金を免れて財産上の利益を得ていると判断されました。
恐喝行為とは、相手を畏怖させる程度の暴行又は脅迫を加えることをいいます。
強盗罪になることも
恐喝行為は暴行又は脅迫を加えること、ですが、強盗罪も、暴行又は脅迫によって成立します。
両罪の違いとしては、その暴行脅迫の程度ということができます。
具体的には、相手の反抗を抑圧する程度であるかどうかです。
相手の反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫によって財物を奪ったり、相手の意思に反して財産上の利益を得たりした場合には強盗罪となってしまいます。
そのため、今回のAも事件時の状況によっては「5年以上の有期懲役」と非常に重い罪が規定されている強盗罪となる可能性もあるのです。
これらの判断は事件当時の行為はもちろん、細かな状況などからの法律的判断が必要となりますので、専門家である弁護士の見解を聞くようにしましょう。
なお、窃盗罪については、財産上の利益に対する規定がないため、状況によっては利益窃盗で不可罰ということも考えられます。