大阪府安全なまちづくり条例違反事件 護身用で木刀はダメ!
- 2019年11月22日
- コラム
護身用で車内に木刀を積んでいて大阪府安全なまちづくり条例違反で検挙された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部が解説します。
◇大阪府安全なまちづくり条例違反で検挙された事例◇
松原市に住むAさんは、数年前に、交通トラブルの相手に暴行された経験があることから、それ以来、護身用の木刀を車に積んでいます。
先日、近所のコンビニの駐車場に車を止めて車内にいたところ、パトロール中の大阪府松原警察署の警察官に職務質問されました。
警察官から「最近物騒な事件がよく起こるから、車の中を確認させてください。」と言われたので、Aさんは車内検索に応じたのですが、その際に、後部座席に置いていた木刀を警察官に発見されたのです。
警察官から木刀を積んでいる理由を追及されたAさんは「数年前に暴行の被害を受けたので護身用に常に積んでいます。」と説明しました。
警察官から「正当な理由がない」と言われたAさんは、大阪府安全なまちづくり条例違反で検挙されて、大阪府松原警察署に連行されました。
(フィクションです。)
◇大阪府安全なまちづくり条例◇
大阪府安全なまちづくり条例は、大阪府内における犯罪の発生件数が増加すると共に、凶悪化したのに伴い、犯罪による被害の防止と、凶悪犯罪発生の未然防止を目的に、平成14年に施行された条例です。
◇木刀の携帯禁止◇
第19条第1項
何人も、道路、公園、広場、駅、空港、埠頭、興行場、飲食店その他公衆が出入りすることができる場所又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他公衆が利用することができる乗物において、その本来の用途に従い使用し、又は運搬する場合その他社会通念上正当な理由があると認められる場合を除いては、鉄パイプ、バット、木刀、ゴルフクラブ、角材その他これらに類する棒状の器具であって、人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるおそれのあるものとして公安委員会規則で定めるものを携帯してはならない。
このように、正当な理由なく木刀を携帯することが禁止されています。
これに違反すると「10万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。(同法第24条第1項)
◇携帯の理由◇
木刀の携帯が、大阪府安全なまちづくり条例違反に該当するかどうかは、携帯していた理由によります。
バット又はゴルフクラブの携帯違反については、同法第19条第2項で、慎重に判断することが規定されていますが、木刀についてはこの規定がありません。
木刀は、性質上の凶器と考えられますので、あえて判断する必要はないと解されますので、木刀の携帯で正当な理由が認められるとすれば、剣道等の競技者などが、練習の行き帰りに携帯していた場合ぐらいではないでしょうか。
◇「護身用」は正当な理由に当たるか?◇
大阪府安全なまちづくり条例違反で検挙される際に、Aさんのように「護身用で持っていました。」等と、携帯の理由を説明する方がいるようですが、「護身用」は正当な理由とならないので注意しなければなりません。
◇職務質問◇
警察官の職務質問は、警察官職務執行法に基づいて行われる行為です。
しかし職務質問できる条件は細かく定められており、警察官だからといって、無条件で誰にでも職務質問できるわけではありませんし、あくまで任意の範囲内でのみ認められています。
そして、この職務質問に付随する行為として、所持品検査や、車内検索といった行為がありますが、当然、これらの行為も、職務質問を受けている人の承諾があって初めてできる行為です。
もし職務質問や所持品検査、車内検索を拒否したい場合は、ハッキリと口に出して断らなければなりません。拒否する意思表示を明確にしなけれな「暗黙の了解を得た」として適法化される可能性もあるので注意しなければいけません。
過去には、刑事裁判において、職務質問や、所持品検査、車内検索が違法だと認められて無罪となったケースも存在するので、疑問のある方は、刑事事件に強い弁護士にご相談ください。