観護措置ってなに
- 2021年4月23日
- コラム
観護措置について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部が解説します。
~事件~
高校生のA君は、他校の生徒と喧嘩し相手の少年に大けがを負わせてしまいました。
この喧嘩によって、傷害罪で大阪府泉大津警察署に逮捕されたA君は、10日間の勾留の後に、観護措置により大阪少年鑑別所に収容されました。
A君の両親は、この後の手続きが全く分からず不安で、少年事件に強い弁護士に相談することにしました。
(この事例はフィクションです。)
~観護措置~
観護措置とは、家庭裁判所が、少年の調査、審判を行うために、少年の心情の安定を図りながら、少年の身体を保護してその安全を図る措置です。
観護措置は、基本的に少年を少年鑑別所に収容して行われますが、少年鑑別所に収容されることなく、家庭裁判所の調査官の看護に付される手続きもありますは、ほとんど活用されておらず、実際は観護措置が決定によって、少年は少年鑑別所に収容されてしまいます。
~観護措置の要件~
観護措置の要件は、観護措置を規定している少年法の第17条1項に「審判を行うため必要があるとき」としか明記されていません。
ここでいう「審判を行うため必要があるとき」とは、具体的に
①審判条件があること
②少年が非行を犯したと疑うに足りる事情があること
③審判を行う蓋然性があること
④観護措置の必要性が認められること
を意味します。
~観護措置の必要性~
「観護措置の必要性」は、具体的に
①調査、審判および決定の執行を円滑、確実に行うために、少年の身体を確保する必要があること。(住居不定や、証拠隠滅・逃亡のおそれがあり、身体を確保する必要性のある場合)
②緊急的に少年の保護が必要であること。
③少年を収容して心身鑑別をする必要があること。
のいずれかの事由がある場合に認められるとされています。
~観護措置の期間~
観護措置の期間は、法律上は「2週間を超えることができず、特に継続の必要があるときに1回に限り更新することができる。」とされていますが、実際は、観護措置の期間が2週間で終了する少年はほとんどおらず、4週間の観護措置期間がとられています。
また、重大な事件を犯した場合や、特別な鑑定が必要な場合など、特別な事情がある場合は、更に2回まで(4週間)まで観護措置期間を延長することができますので、観護措置の期間は最長8週間となります。
~観護措置を回避できるのですか?~
まず観護措置が決定する時期ですが、警察に逮捕・勾留されていた少年に関しては、家庭裁判所に送致された際に観護措置が決定する場合がほとんどです。この場合は、家庭裁判所に送致されて24時間以内に観護措置をとらなければならないとされています。
また、警察等の捜査段階で逮捕、勾留等の身体拘束を受けていない少年に関しては、家庭裁判所に送致された後に、家庭裁判所が観護措置をとる必要性があると判断した場合に観護措置がとられます。
この様に家庭裁判所が少年の観護措置を決定する時に、弁護士が、観護措置の必要がないことを主張して観護措置の決定を回避することができます。
また、一度観護措置が決定してしまっている場合でも、決定に対する異議を申し立てたり、観護措置の取消請求をする事によって、観護措置による身体拘束から少年を解放できる場合もあります。