物を落としたら...②
- 2021年3月23日
- コラム
物を落としたら...②
物を落とした場合について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部が解説します。
~事例~
大阪府堺市のマンションに住む主婦のA子は、ベランダでガーデニングをしていました。
すると、下の道路に隣人Vの車が停まっているのを見つけました。
A子はたびたび隣人であるVの騒音に悩まされており、Vに恨みを持っていたことから手に持っていた植木鉢をVの車に向かって投げ落としました。
植木鉢はVの車に当たり、車の屋根がへこみました。
A子が植木鉢を投げ落とすのを見ていたVは大阪府堺警察署に通報し、A子は器物損壊罪の疑いで逮捕されてしまいました。
(この事例はフィクションです。)
「物を落としたら...」シリーズの第2弾です。
シリーズ第1弾の前回は人に向けて物を落としたという非常に危険な事件について、殺人罪となる可能性があることを紹介しました。
今回のA子は車に向けて物を落としています。
~器物損壊罪~
第261条
「前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。」
他人の「物」を損壊してしまうと器物損壊罪となります。
今回のA子もVの車に向けて植木鉢を落として、破壊していますので、器物損壊罪となりました。
器物損壊罪は親告罪であると規定されています(刑法第264条)ので、告訴がなければ、公訴を提起することができない、つまり起訴できない罪です。
そのため、たとえ告訴されていたとしても検察官が起訴不起訴の判断をするまでに示談を締結し、告訴の取り消しを行ってもらうことができれば起訴されることはなくなります。
そのため、器物損壊罪となってしまった場合には、刑事事件に強い弁護士に示談交渉を依頼するようにしましょう。
~道路交通法違反~
今回のA子は、道路上に停車している車に向けて植木鉢を投げつけ器物損壊罪で逮捕されています。
では、たとえ車を狙ったわけではなく、面白がって道路上に物を落下させただけの場合はどうなるでしょう。
その場合、道路交通法に違反する可能性が高いでしょう。
道路交通法第76条第4項では「何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない」として以下の行為を禁止しています。
1号 道路において、酒に酔つて交通の妨害となるような程度にふらつくこと。
2号 道路において、交通の妨害となるような方法で寝そべり、すわり、しやがみ、又は立ちどまつていること。
3号 交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること。
4号 石、ガラスびん、金属片その他道路上の人若しくは車両等を損傷するおそれのある物件を投げ、又は発射すること。
5号 前号に掲げるもののほか、道路において進行中の車両等から物件を投げること。
6号 道路において進行中の自動車、トロリーバス又は路面電車に飛び乗り、若しくはこれらから飛び降り、又はこれらに外からつかまること。
7号 前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が、道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく交通の妨害となるおそれがあると認めて定めた行為
植木鉢を道路上に投げることは、4号もしくは7号に該当するでしょう。
第76条第4項の行為をした場合の道路交通法違反の罰則は「5万円以下の罰金刑」(道路交通法第120条第1項第9号)が規定されています。