年齢切迫少年を恐喝罪で逮捕・みなし勾留
- 2020年3月2日
- コラム
年齢切迫少年の逮捕・みなし勾留について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部が解説いたします。
◇脅迫罪で逮捕◇
19歳のA君は、SNSにおいて知り合った男子高校生とトラブルになり、この高校生に対して「痛い目に会いたくなければ金をよこせ」などとメッセージを送り、男子高校生から現金を脅し取りました。
男子高校生が、大阪府高石警察署に被害届を出したことから、A君は恐喝罪の容疑で逮捕されてしまいました。
その後、A君は家庭裁判所に送致され、観護措置を受けたがまもなく20歳の誕生日を迎えてしまいました。
A君の家族は、少年事件に強いと評判の弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)
◇インターネットを介した恐喝罪の成否◇
刑法249条1項は、「人を恐喝して財物を交付させた者」を恐喝罪として処罰する旨を定めています。
ここにいう「恐喝」とは、反抗を抑圧するに至らない程度(畏怖する程度で足りるといわれています)の暴行または脅迫を用いて、財物の交付を要求することいいます。
対面であろうがインターネット等を介していようが、相手方(被害者)を脅迫し畏怖させれば、上記「恐喝」に当たることに疑いはありません。
A君は、SNS上で被害者を「恐喝」した上で、この行為によって被害者に金銭を交付させており、恐喝罪(1項恐喝)が成立するものと考えられ、かかる容疑で逮捕されていると考えられます。
◇年齢切迫少年といわゆる「みなし勾留」について◇
少年事件に関しては、逮捕や勾留などを経て捜査が終わった後、原則として全件が家庭裁判所に送致されることになります(少年法41条、42条)。
そして、上記事例のA君に対して行われている観護措置とは、少年事件の捜査のために少年の身柄を拘束するものであり、事件の内容に応じて2~8週間の範囲(実務上特に多いのは4週間)で行われます。
もっとも、少年法19条2項は、「家庭裁判所は」「本人が20歳以上であることが判明したときは……事件を管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない」と、少年が20歳以上になったときは、事件を家庭裁判所から検察庁に送致する旨を規定しています。
この規定により事件が検察官に送致されると、観護措置による身体拘束は裁判官が行う勾留として扱われるようになります(少年法45条4号・同45条の2)。
こうして行われる勾留は、一般に「みなし勾留」と呼ばれています。
本件A君のように、観護措置中に20歳を超えた場合には、このような措置が採られることになります。
しかし、注意が必要なのは、観護措置の要件と(起訴前)勾留の要件が異なり、同じ身体拘束でも違い見られるということです。
観護措置の要件として、「観護措置の必要性」が認められることが必要であり、これには
①住所不定又は逃亡のおそれがあり、出頭を確保する必要があること。
②証拠隠滅のおそれがあり、証拠を保全する必要があること。
ですが、これらとは別に、少年の心身の状態等を勘案して「観護措置の必要性」が認められる場合もあります。
これに対し、(起訴前)勾留の要件としては、上記①②に対応する「勾留の理由」(刑事訴訟法60条1項)に加え、勾留により得られる利益と不利益の均衡を要求する「勾留の必要性(相当性)」が認められることが必要となります。
このように対比すると重複する部分があることが分かりますが、観護措置の要件が満たされれば当然に勾留の要件が満たされるわけではないこともまた明らかです。
したがって、弁護士としては、勾留の要件を満たしていないとして、みなし勾留に対する準抗告という不服申立てをすることが考えられます。
これは、勾留の要件を満たさないときは、観護措置を取り消さなければならないことから、これの取消しを求め、それによりみなし勾留もなかったことになるというものです。
弁護士および逮捕された本人にとって、身柄の解放活動は極めて重要な活動です。
しかしながら、少年事件が絡むと上記のとおり複雑な様相を呈すことがあるため、少年事件に関する知識が必要不可欠なものとなります。
◇少年事件に強い弁護士◇
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部は、少年事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
いわゆる年齢切迫少年の弁護活動の経験を持つ弁護士が在籍しており、少年事件に関する知識も豊富に有しています。
本件のようなケースを含め少年事件に関しては、状況や年齢など様々な事情によって通常の刑事事件とは異なる対応が求められることが少なくありません。
お子さんが恐喝事件で逮捕された方のご家族は、まずは何時でも通話可能フリーダイヤル0120-631-881までお問い合わせください。