執行猶予の獲得に強い弁護士①(罰金の前科がある場合)
- 2020年2月17日
- コラム
罰金の前科がある場合の執行猶予の獲得について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部が解説します。
◇万引きの再犯で執行猶予を目指す◇
新聞配達員のAさんは、一週間前に、堺市内のスーパーで万引きして、店員に現行犯逮捕され、現在は、大阪府北堺警察署に勾留されて、取調べを受けています。
Aさんは、これまでも万引き事件で警察に逮捕された前科があり、昨年に逮捕された際の処分は、「略式起訴による罰金刑(30万円)」でした。
今回の万引き行為を認めているAさんは、執行猶予の獲得に強いと評判の弁護士を探しています。
(フィクションです。)
◇窃盗罪と刑事罰◇
万引きは、刑法上で定められている「窃盗罪」に該当します。
刑法235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部では、これまで多くの万引き事件の法律相談を受けてまいりました。
それらの中には、過去に窃盗罪を犯してしまったにもかかわらず、再度窃盗罪を犯してしまったという方も少なくありません。
万引きは、比較的被害額が少額で、偶発的な犯行がほとんどなので、窃盗罪の中でも比較的軽い事件として扱われますが、再犯を繰り返してしまうと、正式に起訴されて刑事裁判で実刑判決が言い渡される場合もあります。
また10年間の間に、窃盗罪で複数の実刑判決を受けた場合は、常習累犯窃盗罪の適用を受け、より重い刑事罰が科せられることがあるので、注意しなければなりません。
◇執行猶予◇
執行猶予とは、一定期間言い渡された刑罰の執行を猶予し、その猶予期間中に犯罪をすることなく過ごした場合、言い渡された刑罰を受けることなく刑罰権の消滅を認めるという制度です。
執行猶予がどういった時につけることができるのかは、以下の通り刑法第25条に規定があります。
刑法25条(刑の全部の執行猶予)
1項 次に掲げる者が3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
1号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2項 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。
ただし、次条第1項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
◇Aさんの場合◇
Aさんは1年前に同様の窃盗罪で罰金刑を受けていることから、今回の窃盗事件では起訴され、刑事裁判になる可能性が高いと考えられます。
刑事裁判で有罪判決を受ける場合、多くは懲役刑を宣告されることになります。
そうした場合、執行猶予がつかなければ刑務所へ行くことになってしまいますから、何とか執行猶予を獲得したいと考える方は多いでしょう。
Aさんのケースは、刑法第25条第1項第1号の条件に当てはまり、法律上、執行猶予を獲得することが可能です。
Aさんは、窃盗罪の前科がありますが、それは罰金刑にとどまっており、「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」であると言えます。
ですから、後は言い渡される刑が「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」の範囲内になるようにすることが必要です。
窃盗罪の法定刑は、「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」となっていますから、もちろん言い渡される刑が「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」を超えてしまう可能性もあります。
そのため、執行猶予獲得のためには、示談締結や再犯防止策の徹底等を主張し、言い渡される刑が「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」の範囲に収まるよう求めていくことが必要とされるでしょう。
◇執行猶予の獲得に強い弁護士◇
「初めて正式裁判になるような場合には執行猶予になる」「被害額が少なければ執行猶予になる」という情報も散見されますが、先ほど挙げた条文にあるように、執行猶予は「その刑の全部の執行を猶予することができる」と定められているだけで、必ずつけてもらえるものではありません。
情状が悪ければ、すぐに執行猶予のつかない実刑判決が下されることも否定はできません。
執行猶予を目指すのであれば、少しでもリスクを減らすために、刑事事件に強い弁護士に相談・依頼することが望ましいでしょう。