釈放のための刑事弁護活動②
- 2019年11月18日
- コラム
釈放のための刑事弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部が解説します。
◇ 事例 ◇
~昨日のコラムの続き~
大阪府警に不正アクセス禁止法で逮捕された、Aさんの夫は、逮捕後に20日間の勾留をされましたが、その間の釈放は叶わず、勾留の満期と共に起訴されてしまいました。
出産を控えているAさんは、夫の一刻も早い釈放(保釈)を望んでいます。
(フィクションです。)
前回のコラムでは起訴前の釈放について解説いたしましたが、本日は、起訴後の釈放(保釈)について解説します。
◇ 保釈 ◇
刑事事件を起こして警察に逮捕された後に勾留されると、勾留の満期の日に検察官は起訴するか否かを判断します。
検察官が起訴しなかった場合は、勾留の満期と共に釈放されますが、起訴された場合は、勾留満期後も起訴後勾留によって身体拘束を受けることとなります。
起訴後の勾留によって身体拘束を受けている場合は、裁判官に対して保釈を申請し、裁判官が保釈を認めた上で、裁判所の保釈金を納付すれば釈放されることになります。
保釈の請求は、起訴直後から裁判で判決が言い渡されるまでの間、いつでも何度でも行うことができます。
◇ 保釈の種類 ◇
保釈は法律的3種類が存在します。ここでは、それぞれの保釈について解説します。
~権利保釈~
権利保釈は、刑事訴訟法第89条に規定されている保釈で
①死刑・無期・短期1年以上の懲役・禁錮に当たる事件ではない
②被告人が前に死刑・無期・長期10年を超える懲役・禁錮に当たる罪で有罪の宣告を受けたことがない
③常習として長期3年以上の懲役・禁錮に当たる罪を犯した事件ではない
④罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がない
⑤被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者・その親族の身体・財産に害を加え、またはこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由がない
⑥氏名・住居が分かるとき
の全ての要件を満たす場合は、裁判官は保釈を認めなければいけません。
~裁量保釈~
裁判所の裁量で保釈を認めることを「裁量保釈」といいます。
裁量保釈は、権利保釈のように明確な要件が存在するわけではありません。
そのため、弁護人がいかにして保釈の必要性と相当性を裁判官に訴えるかが、保釈が認められるかどうかに影響するのです。
裁判官は
①逃亡のおそれがないこと
釈放された被告人に逃亡のおそれがないことを証明しなければなりません。
そのためには、保釈後に住定地があり、監督者が存在することが必要となります。
②罪証隠滅のおそれがないこと
事件の被害品等の証拠品は、起訴された時点で捜査機関の管理下にあるので、証拠品を隠滅することは事実上不可能でしょう。
③保釈を求める理由があること
一般的な保釈を求める理由とは、病気の治療や、仕事に関すること、家族に関すること等だといわれています。
身体拘束を受けることによって被告人が被る、健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益を裁判官に訴える必要があります。
これらに加えて裁判官は、事件の内容や、被告人の性格、素行、家族関係、健康状態、拘束期間、裁判の見通し、保釈金の額などの様々な諸事情を考慮し保釈の必要性や相当性を判断します。
~義務保釈~
身体拘束が不当に長くなった被告人に認められるのが義務保釈ですが、実務上、滅多にあるものではなく、毎年数人しか義務保釈で釈放される被告人はいません。
◇ 保釈金 ◇
弁護人の請求によって裁判官が保釈を認めると同時に保釈金が決定します。
つまり、裁判官が保釈を認めても、保釈金を裁判所に納付しなければ釈放されることはありません。
保釈金は、裁判の円滑な進行と、被告人の身柄を担保するために一時的に裁判所に預けるものなので、刑が言い渡されて刑事手続きが終了すれば返還されます。
みなさんが気になるのが保釈金の額ですが、これは定まっているものではありません。
事件の内容や、被告人の経済状況等によって裁判官が決定するもので、数百万円から億単位にまで及ぶ場合もあります。