商標法違反で逮捕
- 2023年10月29日
- コラム
違法コピー商品の所持で逮捕される場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
泉大津市の服飾雑貨販売店の経営者Aさんは、偽ブランド品を販売目的で所持していたとして、大阪府泉大津警察署に商標法違反の疑いで逮捕されました。
Aさんは、店の倉庫に某ブランドのロゴが付いたマスクや財布、カバンなどを複数所持していました。
Aさんは、今後どのような処分となるのか不安で仕方ありません。
(フィクションです)
違法コピー商品の所持:商標法違反
違法コピー商品の所持は、登録してある商標を不正利用したとして、商標法違反に問われる可能性があります。
商標法は、事業者が、自社の取り扱う商品やサービスを他社のものと区別するために使用するマークである商標を保護する法律です。
「商標」は、人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるものであって、業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用するもの、及び業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用するものです。
商標登録原簿に登録された商標は、商標法によって保護されます。
商標登録原簿に登録されると、商標権が生じます。
「商標権」とは、登録商標(商標登録を受けている商標)を指定商品又は指定役務(商標出願にあたり、その商標を使用している又は使用を予定している商品や役務を指定する必要があり、この指定された商品や役務のこと)について排他的独占的に使用できる権利のことです。
商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有します。
商標権者は、専用権を実効あるものとするために、登録商標の類似範囲の商標を第三者が使用することを禁止することができます。
商標権者は、その商標権について専用使用権を設定することができます。
専用使用権とは、設定行為で定めた範囲内において、指定商品又は指定役務について登録商標を排他的独占的に使用できる権利のことです。
商標権の侵害
(1)商標権の直接侵害行為
商標法は、商標権又は専用使用権を侵害した者については、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することと定めています。
商標権の侵害というのは、他人の登録商標をその指定商品又は指定役務について使用する行為、及び他人の登録商標の類似範囲において使用する行為をいいます。
何の使用権限もない者が、指定商品又は指定役務について商標登録を受けている商標と同じ商標を使用した場合は、商標権の直接侵害行為に当たります。
(2)商標権の間接侵害行為
商標法は、商標権又は専用使用権の侵害する行為とみなされる行為を行った者については、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを丙かすると定めています。
商標権の侵害行為とみなされる行為には、
①指定商品・指定役務についての登録商標に類似する商標の使用、又は指定商品・指定役務に類似する商品・役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用。
②指定商品又は指定商品・指定役務に類似する商品であって、その商品又はその商品の包装に登録商標またはこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為。
③指定役務又は指定役務・指定商品に類似する役務の提供にあたりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為。
④私的役務又は指定役務・指定商品に類似する役務の提供にあたりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し、若しくは輸入する行為。
⑤指定商品・指定役務又はこれらに類似する商品・役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為。
⑥指定商品・指定役務又はこれらに類似する商品・役務について登録商標またはこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引渡し、又は譲渡・引渡しのために所持する行為。
⑦指定商品・指定役務又はこれらに類似する商品・役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をし、又は使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造し、又は輸入する行為。
⑧登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引渡し、又は輸入する行為。
さて、違法コピー商品の所持については、その数が多ければ、販売目的があると認められ、商標権の間接侵害行為に当たる可能性があります。
犯罪の成立には、登録商標又は指定商品・指定役務の存在及びこれと同一又は客観的に類似した商標、商品・役務の使用等の事実を認識していることが必要となります。
そのため、違法コピー商品だと知らずに所持していた場合には、故意がなく犯罪は成立しません。
容疑を認める場合であっても否認する場合であっても、自己に不利な供述がとられることのないよう早期に弁護士に相談し取調べ対応についての適切なアドバイスをもらうのがよいでしょう。