特殊詐欺事件の受け子を紹介 堺市でリクルーターが逮捕
- 2019年12月29日
- コラム
特殊詐欺事件の受け子を紹介した容疑で、堺市のリクルーターが警察に逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部が解説します。
◇特殊詐欺事件の受け子を紹介◇
大学3回生のAさん(21歳)は、地元の先輩に頼まれて、この先輩に、大学の後輩を、特殊詐欺事件の受け子として紹介しました。
1ヶ月ほど前に、先輩に紹介した大学の後輩が、堺市で起こった特殊詐欺事件で、受け子として逮捕されたようです。
Aさんは、前々から、先輩が特殊詐欺の犯行グループの一員であることは知っていたので、自分も警察に逮捕されるのではないかと不安です。
(フィクションです。)
警察が注意を呼び掛けているにも関わらず、特殊詐欺事件は増加する一方です。
そのため警察等の捜査当局は、特殊詐欺グループの摘発を強化しており、毎年多くの犯人が警察に逮捕され、受け子や出し子といった犯人グループの末端の若年化が問題となっております。
そんな中、今年になって犯人グループに受け子や出し子を紹介した、いわゆる「リクルーター」と呼ばれる者たちが警察に逮捕される事件が増えてきています。
実際の特殊詐欺事件に、直接関わっていなくても逮捕される可能性が非常に高いリクルーターについて解説します。
◇リクルーター◇
特殊詐欺事件の受け子や出し子など、事件の最末端部分に関わる人物を犯行グループに、紹介する人たちのことを「リクルーター」と呼びます。
◇リクルーターは何の犯罪になるの?◇
リクルーターに適用されるのは、詐欺罪の共犯若しくは幇助犯となる可能性が非常に高いでしょう。
共犯として認められると、一緒に犯罪を犯した仲間として捉えられるので、実際に詐欺事件を起こした者と同じように刑事罰が科せられる可能性がありますが、幇助犯と認められると、犯罪を犯した者を助けた(幇助した)と捉えられ、この場合は、法律的には従犯となり、実際に犯行を犯した犯人よりも刑事罰が軽減されます。
リクルーターが特殊詐欺事件の共犯として認められるには、リクルーターが、どの程度まで犯行を認識していたかに左右されます。
Aさんの事件を例にしますと、地元の先輩が特殊詐欺事件に関わっていることを知らずに、大学の後輩に適法なアルバイトを紹介する認識の下で先輩に紹介していたのであれば、Aさんは何の罪にも問われることはないでしょう。
逆に、地元の先輩が特殊詐欺事件に関わっていることを知った上で、それに加担させるために後輩を紹介していた場合は、詐欺罪の共犯として捉えられる可能性が非常に高いでしょう。
また、地元の先輩が特殊詐欺事件に関わっていることまでは知らないにしても、何らかの犯罪に関与しているのではないかという認識のもとで、先輩の犯行を手助けさせるつもりで、後輩を紹介していた場合は、幇助犯として捉えられる可能性が高くなります。
共犯が適用されるか、幇助犯が適用されるかは、リクルーターが「犯行をどの程度まで知っていたか。」によって異なり、その判断には専門的な法律の知識を有しますので、ここで一概に解説することはできません。
自身が紹介した人が特殊詐欺事件で警察に逮捕されてしまった場合は、刑事事件専門の弁護士に相談することをお勧めします。
◇刑事罰◇
~共犯として認定された場合~
共犯として認定され、裁判で有罪が確定てしまうと、詐欺罪の法定刑内、つまり「10年以下の懲役」の範囲内で刑事罰が科せられます。
~幇助犯として認定された場合~
幇助犯として認定されると、従犯の減軽事由となるので、裁判で有罪が確定しても、詐欺罪の法定刑、つまり「10年以下の懲役」よりも軽い刑事罰が言い渡されます。
その範囲は、刑法第68条に規定されている、法律上の減軽方法が適用されるので「5年以下の懲役」の範囲内で刑事罰が科せられることとなります。