JR和歌山駅の刑事事件で逮捕 精液を他人にかけたら
- 2020年1月10日
- コラム
JR和歌山駅について、精液を他人にかけて警察に逮捕された刑事事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部が解説します。
◇JR和歌山駅の刑事事件◇
和歌山市に住むAさんは、電車通勤をしており、毎日JR和歌山駅を利用します。
仕事でのミスが続きストレスがたまっていたAさんは、先月からJR和歌山駅において、注射器に入れた自分の精液を、他人にかけてストレスを発散していました。
これまで10回ほどの犯行を繰り返していたAさんでしたが、今朝、出勤途中にJR和歌山駅において、私服の捜査員に声をかけられたAさんは、近くの交番所に任意同行されて取調べを受けました。
そこでカバンの中から、精液の入った注射器が見つかって言い逃れできなくなったAさんは、犯行を自供してしまい、Aさんはその後逮捕されてしまいました。
Aさんの逮捕を知った家族は、和歌山県内の刑事事件に対応している、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部に刑事弁護を依頼することにしました。
(フィクションです。)
◇精液を他人にかけたら?◇
Aさんの「精液を他人にかける。」という行為が何の犯罪に当たるのかについて検討しますと、考えられるのは「暴行罪」若しくは「器物損壊罪」でしょう。
●暴行罪
暴行罪とは刑法第208条に規定されている法律です。
他人に暴行し、相手が怪我をしなかった時に成立する犯罪で、代表的な行為は、殴る、蹴るといった、人に対する不法な有形力の行使ですが、他人に向かって石を投げた場合、石が人の身体を直撃しなくても暴行罪が成立しますし、唾をかけたる場合も暴行罪が成立します。
そのことを考えるとAさんの行為は「暴行罪」に該当するでしょう。
暴行罪の法定刑は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。
●器物損壊罪
器物損壊罪とは刑法第261条に規定されている法律です。
人の物を壊した時に成立する犯罪ですが、ここでいう「壊す」というのは必ずしも物理的に損壊、破損するだけでなく、その物の効用を害する一切の行為が含まれます。
人の身体に直接精液をかけた場合は上記した暴行罪が成立するにとどまるでしょうが、着ている被服や、持っているカバン等に精液がかかった場合は、器物損壊罪が成立する可能性があります。
器物損壊罪の法定刑は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」です。
ちなみに器物損壊罪は親告罪ですので、被害者等告訴権者(告訴権を有する者)の告訴がなければ、検察官は起訴することができません。
◇その他◇
●迷惑防止条例違反
全国の都道府県条例には「迷惑防止条例」という、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為を取り締まるための条例が制定されており、和歌山県にも、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」が制定されています。
この条例では、公共の場所での「卑猥な言動」が禁止されています。
卑猥な言動とは、一般人の性的道義観念に反し、他人に性的羞恥心、嫌悪を覚えさせ、又は不安を覚えさせるような、いやらしくみだらな言語、動作を言いますので、他人に精液をかける行為が、これに当たる可能性も十分にあるでしょう。
●建造物侵入罪
これまで挙げたのは「他人に精液をかける」というAさんの行為に対して該当する法律ですが、「他人に精液をかけるためにJR和歌山駅構内に入った」のであれば、Aさんが駅構内に立ち入る行為自体が「建造物侵入罪」に当たる可能性があります。
◇重要なのは◇
同じ行為であっても、最初に何の法律を適用するかは、警察の判断となります。
「他人に精液をかける。」という一つの行為であっても、上記したように様々な犯罪に抵触する可能性がありますので注意しなければなりません。
何の法律が適用されるかによって、刑事処分が異なり、その後の弁護活動も左右されることになるので、重要なのは、早めに弁護士に相談して疑律判断を仰ぐことです。