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準強制わいせつ罪で正当業務行為を主張 | コラム | 刑事事件の弁護士ならあいち刑事事件総合法律事務所 堺版

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準強制わいせつ罪で正当業務行為を主張

準強制わいせつ罪と正当業務行為について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部が解説します。

◇準強制わいせつ事件◇

堺市で個室マッサージ店を営むAさん(51歳)は、常連客だった女性Vさん(34歳)に対してマッサージを施しました。
Aさんは、マッサージ中、Vさんが熟睡しているのに気づきました。そうしたところ、Aさんは目を覚ましたVさんから「下着の中に手を入れて陰部を触ったのではないか」と問い詰められてしまいました。
Aさんはこれを否定しましたが、その態度が頑なだったため、Vさんに110番通報されてしまいました。
そして、Aさんは、駆け付けた大阪府堺警察署の警察官に準強制わいせつ罪で逮捕されてしまいました。
Aさんは警察官に「触っていない。仮に、触っていたとしても正当業務行為の一環だ。」などと話しています。
Aさんは接見に来た弁護士にも同様のことを話し、不起訴処分、早期釈放に向けて弁護活動を始めてもらいました。
(フィクションです。)

◇準強制わいせつ罪とは◇

準強制わいせつ罪は刑法178条1項に規定されています。

刑法178条1項
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による。

「心神喪失」とは、精神上の障害によって正常な判断を失っている状態をいいます。具体的には、熟睡、泥酔・麻酔状態・高度の精神病などがこれに当たります。自分のしたことが善いことか悪いことか判別できる能力、その能力に従って行動できる能力が完全に喪失された心神喪失(刑法39条1項)とは若干意味が異なります。
「抗拒不能」とは、心神喪失以外の理由によって心理的・物理的に抵抗することが不可能又は著しく困難な状態をいいます。睡眠中、泥酔中、麻酔中、催眠状態など、心神喪失以外の理由でわいせつな行為をされていることを認識していない場合がこれに当たります。また、わいせつな行為をされること自体認識していても、加害者の言動によりこれを拒むことを期待することが著しく困難な状態なども含まれます。

「(心身喪失・抗拒不能に)乗じる」とは既存の当該状態を利用することをいいます。当該状態を作出した者とわいせつ行為をした者が同一であることは必要ではありません。ただし、この場合、本罪が成立するには、わいせつ行為をした者が、被害者が当該状態にあることを認識しておく必要があるでしょう。
「(心神喪失・抗拒不能)にさせる」手段には制限はありません。麻酔薬、睡眠薬の投与・使用、催眠術の施用、欺罔などはいずれもその手段となり得るでしょう。

さらに、本罪は故意犯です。加害者において、「被害者が心神喪失、抗拒不能の状態にあること」、「被害者を心神喪失、抗拒不能の状態にさせたこと」、「わいせつ行為に及んだこと」「被害者の同意がないこと」を未必的にも認識している必要があります。

◇正当業務行為◇

Aさんは正当業務行為も主張しているようです。
正当業務行為は刑法35条に規定されています。

刑法35条
法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

つまり、当該行為が正当業務行為として認められれば、準強制わいせつ罪の成立要件は満たすけれども、違法性がないから処罰しない、ということになります。

一番分かりやすい例が、

プロ野球のピッチャーがバッターにデットボールを与えること

でしょう。
この場合、本来であれば過失傷害罪(刑法209条1項)が成立しますが正当業務行為として罰せられないのが通常です。
しかし、いくら一見して正当業務行為に当たる行為であっても、

社会通念上是認される範囲を超える行為

は正当業務行為とは評価されません。
つまり、ピッチャーが腹いせに故意にバッターにボールを与えた場合は罪に問われてしかるべき、というわけです(この場合は、暴行罪が成立する可能性があります)。
本事例のAさんの場合も、行為態様などから「社会通念上是認される範囲を超える行為」だったか否かが罪に問われるか否かのポイントとなりそうです。

◇刑事事件に強い弁護士◇

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