【銃刀法違反事件】けん銃の加重所持で逮捕
- 2019年12月18日
- コラム
銃刀法違反のけん銃の加重所持事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部が解説します。
◇けん銃の加重所持事件の事例◇
泉佐野市で清掃業を営むAさんは数年前まで指定暴力団に所属する暴力団組員でした。
覚せい剤の使用事件で有罪判決を受けると同時に組を破門になったAさんは、それ以降は清掃会社を起ち上げて正業に就いていますが、現役の暴力団組員の時に隠し持っていたけん銃と実包(拳銃の弾)を処分できずに、未だに自宅の押し入れに隠し持っています。
このことを知っているのは、数カ月前まで同棲していた元交際相手だけなのですが、元交際相手がこの情報を大阪府泉佐野警察署に提供したことから、Aさんは銃刀法違反(拳銃の加重所持)で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
◇銃刀法◇
世間一般に知られている「銃刀法」の正式な法律名は「銃砲刀剣類所持等取締法」です。
この法律では、銃砲刀剣類の所持等が規制されています。
本日は、この法律で規制されている「銃砲」について詳しく解説します。
◇「銃砲」とは◇
この法律でいう「銃砲」とは、けん銃、小銃、機関銃、砲、猟銃など、金属製の弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃のことです。(同法第2条1項参照)
この法律は、銃砲が犯罪等に使用された場合に、その危害が大きいことから、その危害を防止するためにあるものなので、人の殺傷を目的としていない銃については規制の対象外となります。
そのため、一見してけん銃の形状をしている物であっても、殺傷能力がない物については、取締りの対象外となっています。
銃刀法の取り締まり対象となるの「銃砲」は
①金属製の弾丸を発射する機能があること
②発射機能を有すること
③殺傷能力があること
が最低限の要件となります。
◇けん銃所持◇
この法律でけん銃の所持が禁止されています。
所持違反には2種類の罰則が設けられており、単にけん銃を所持していた場合は、同法第31条の3第1項の適用を受けて「1年以上10年以下の懲役」が法定刑として定められていますが、違法に所持したけん銃と合わせて、そのけん銃に適合する実包(弾)を一緒に不法所持した場合は、けん銃の加重所持罪となります。
けん銃の加重所持罪は、同法第31条の3第2項の適用を受けて「3年以上の有期懲役」が法定刑として定められています。
◇所持の意義について◇
この法律に、所持の意義についての定義規定はありませんが、所持とは所定の物の保管について実力支配関係を持つこと、つまり、その物を事実上管理、支配することです。
実際に、手に持ったり、ポケットに入れて携帯しているだけに限られず、自分が支配、管理している場所に保管している場合も含まれますので、覚せい剤等の薬物事件でいうところの所持罪と同じと考えて差し支えないでしょう。
ただけん銃の所持罪が成立するには、所持の故意が必要となりますので、最低でも、自分の実力的支配下にけん銃がることの認識は必要となるでしょうが、所持の動機や目的までは必要とされません。
◇こんな場合でも所持罪が成立する◇
お亡くなりになられた遺品からけん銃等の禁制品が見つかる場合があります。
そのような場合は速やかにお近くの警察署に届け出ることを勧めします。
もし遺品に、けん銃等の禁制品があったのを見つけたにも関わらず、そのまま自宅等で保管し続けていたら、銃刀法違反に抵触してしまう可能性があるので注意してください。